「明らかに」? 「一見は」? それとも... "apparently" の意味の見分け方

われわれ日本人は一人の例外もなく、"apparently" が「明らかに」の意味なのか、それとも「一見は、表面的には」の意味なのか判断できずに困ります。

例えば次の文:
Apparently he is guilty.

この文の意味は「明らかに彼は有罪だ」なのでしょうか?

それとも「表面的には彼は有罪だ(実際は無罪かもしれない)」でしょうか?

あるいは...?

この記事では、"apparently" の意味の捉え方を説明します。

1. 辞書の定義

辞書に記載される "apparently" の意味は次の3つです:

  1. 明らかに~(obviously, evidently)
  2. 一見は~、表面的には~、~みたい(seemingly, it seems that)
  3. 聞いたところによると、伝えられるところによると~、~だそうだ(reportedly, allegedly, I hear that)
それぞれの意味の例文を1つずつ以下に記載します:
A woman sneers contemptuously; obviously the girl is a slut, because quite apparently she is wearing no brassiere.
1人の女性が軽蔑するように冷笑する。 その少女がふしだらであるのが明白だったからだ。 少女は明らかにブラジャーを着けていなかった。
# "apparently" が「明らかに」の意味。
Apparently, yes. Actually, no.
表面的には、その通り。 実際には、そうではない。
# "apparently" が「表面的には」の意味。
A woman was taken to the hospital after she was apparently shot by a dog while waiting at a train crossing in Enid, Oklahoma.
伝えられるところによると、米国オクラホマ州のイーニッドで1人の女性が電車の通り過ぎるのを待っていたところを犬に銃で撃たれて病院へ運ばれた。
# "apparently" が「伝えられるところによると」の意味。

2. 意味から判断するのは難しい

上記の例はいずれも "apparently" がどの意味で使われているかを文脈から判断できます。 "apparently" の意味の違いが特に分かりやすいケースを選んだからです。

大部分のケースではしかし、"apparently" の意味を文脈から判断できません。 例えば次のように "apparently" を「明らかに」の意味に捉えたくなる文でも、"apparently" を「一見」の意味に理解できますし、そうすべきケースが大部分です。
However his reasoning was apparently wrong, because the door didn't moved this time either.
①しかし彼の考えは明らかに間違っていた。 というのも、今回もドアが動かなかったからだ。
②しかし彼の考えは間違っていたようだ。 というのも、今回もドアが動かなかったからだ。
# 「ドアが動かなかった」が確たる事実なので「彼の考えが間違っていた」のは「明らか」に思えるが、英語を母国語とする人の大部分は、この "apparently" を "seemingly" の意味に理解する。

3. 実は判断の必要はない

しかし実のところ、"apparently" の意味の判別ではあまり困りません。

なぜなら...

現代で "apparently" は「明白に」の意味では滅多に使われないからです。 現代の英米人は "apparently" を(基本的には)次のいずれかの意味に理解します。

  • 一見は(seemingly)
  • 聞くところによると(reportedly, allegedly)
多くの辞書では "apparently" に「明白に」の意味を載せていませんし、載せている辞書もそれを古い(数百年前の)用法として記載しています。
冒頭に記載の「"apparently" の3つの意味」では、このことを伏せていました

母国語話者の見解

英語圏の語学系の掲示板を巡っても、"apparently" を "seemingly""reportedly" の意味に理解するという見解ばかりです。
"seemingly" と "reportedly" は「確証の無さ」が共通点。 つまり "apparently" は現代ではもっぱら「確証はないけど恐らく~」の意味で使われるわけです。

"apparently" に「明白に」の意味があると知る人も、「明白に」は現代では使われない古い意味という認識でした。

ただし

ただし現代においても、"apparently" が「明白に」の意味で使われることはあります。

"apparently" の意味の判別は極めて困難ですが、少なくとも "quite apparently" という表現では "apparently" が「明白に」という意味です。 「明らかに」の "apparently" の意味として冒頭に記載した例文も "quite apparently" です。

"quite apparently" の用例を、もう1つ挙げておきます。
First, and quite apparently, butterfly wings are systems for flight comprised of four structural components, arranged in pairs.
まず第一に、そして明白なことであるが、蝶の羽は飛行のためのシステムであって4つの構造要素がペアになっている。

4. 代替表現

やっぱり意味が曖昧

現代の "apparently" に同居する "seemingly(うわべは~)" の意味と "reportedly(聞くところによると~)" の意味は、似てはいても同一ではありません。 そして、この2つの意味を簡単に判別する確実な方法は存在しません。 「明白に」という意味の選択肢がなくても、"apparently" はやっぱり意味が曖昧な言葉です。

したがって自分が言葉を発する側に立つときには、"apparently" の使用を避け、意味が明確な他の表現を使用すると良いでしょう。

代替表現

"apparently" の代わりに使える表現は次のようなもの:

  • obviously ・・・ 明らかに
  • It is obvious (that)~ ・・・ ~は明らかだ
  • seemingly ・・・ 一見は、表面上は
  • It seems (that)~ ・・・ ~と思える、~のようだ
  • reportedly ・・・ 伝え聞くところによると
  • I hear (that)~ ・・・ ~だと聞く、~だそうだ
  • allegedly ・・・ 真偽のほどは分からないが、伝えられるところによると

It is apparent~

"It is apparent (that)~" は "apparently" と違って意味が明確で、「~は明白である」の意味にしか理解されません(1)

叙述形容詞(2) としての"apparent" に「明白な」の意味でしか無いためです。

(1) 「~は表面的である、うわべだけである」の意味にならない。

(2) 名詞を直接に修飾しない形容詞。 Be動詞の述部などに使われる。 "It is apparent~" の "apparent" は叙述形容詞。
役割分担

こうして見ると、現代の英語は "apparently" と "It is apparent" が役割分担する方向に進んだ("quite apparently" を除いて)と言えるでしょう。

  • apparently~ ・・・《不確実》一見は~、伝えられるところによると~(seemingly, reportedly)
  • It is apparent~ ・・・《確実》~は明白である(obviously)

5. まとめ

  1. "apparently" は、現代では「明白に」の意味では、ほとんど使われない。
  2. "apparently" は、現代では主に「確証はないけれど恐らく」の意味で使われる。
  3. "apparently" の「確証はないけれど恐らく」の意味は、"seemingly" の意味のときと "reportedly" の意味のときがあり、両者の区別は用意ではない。
  4. したがって "apparently" は意味が曖昧な語である。
  5. "apparently" は意味が曖昧なので、代わりに他の表現を使うのが良い。