われわれ日本人は一人の例外もなく、"apparently" が「明らかに」の意味なのか、それとも「一見は、表面的には」の意味なのか判断できずに困ります。
例えば次の文:この文の意味は「明らかに彼は有罪だ」なのでしょうか?
それとも「表面的には彼は有罪だ(実際は無罪かもしれない)」でしょうか?
あるいは...?
この記事では、"apparently" の意味の捉え方を説明します。
1. 辞書の定義
辞書には "apparently" の意味として次の3つの意味が記載されています:
- 明らかに~(obviously, evidently)
- 一見は~、表面的には~、~みたい(seemingly, it seems that)
- 聞いたところによると、伝えられるところによると~、~だそうだ(reportedly, allegedly, I hear that)
2. 意味から判断するのは難しい
上記の例は "apparently" の意味の違いが特に分かりやすいケースを選んだので、"apparently" がどの意味で使われているかを文脈から判断できます。
しかし大部分のケースでは、"apparently" の意味を文脈から判断できません。 例えば次のように "apparently" を「明らかに」の意味に捉えたくなる文でも、"apparently" を「一見」の意味に理解できますし、そうすべきケースが大部分です。②一見は太陽は明るく輝いている。
# 太陽が明るく輝いているのは万人に明らかなことなので、この例文の "apparently" が「明らかに」の意味であるのは一見明らか(apparently apparent)に思えます。
しかしそんな文であっても、"apparently" を使う人の物事の捉え方しだいでは、"apparently" が「一見は」の意味になり得ます。
例えば、次のように "Apparently the sun is bright." の後ろに "but in fact" が続くなら、この "apparently" を「一見は」の意味に捉えたくなります:
Apparently the sun is bright, but in fact... 太陽は一見は明るく輝いているが、実は...②しかし彼の考えは間違っていたようだ。 というのも、今回もドアが動かなかったからだ。
3. 実は判断の必要はない
しかし実のところ、"apparently" の意味の判別ではあまり困りません。
なぜなら...
現代で "apparently" は「明白に」の意味では滅多に使われないからです。 現代の英米人は "apparently" を(基本的には)次のいずれかの意味に理解します。
- 一見は(seemingly)
- 聞くところによると(reportedly, allegedly)
母国語話者の見解
"apparently" に「明白に」の意味があると知る人も、「明白に」は現代では使われない古い意味という認識でした。
ただし
ただし現代においても、"apparently" が「明白に」の意味で使われることはあります。
"apparently" の意味の判別は極めて困難ですが、少なくとも "quite apparently" という表現では "apparently" が「明白に」という意味です。 「明らかに」の "apparently" の意味として冒頭に記載した例文も、実は "quite apparently" です。
"quite apparently" の用例を、もう1つ挙げておきます。
4. でも、やっぱり意味が曖昧
現代の "apparently" に同居する "seemingly(うわべは~)" の意味と "reportedly(聞くところによると~)" の意味はどちらも「確証の無さ」を意味します。 確証がない理由が異なるだけです。"seemingly" と "reportedly" は、意味に共通する部分があるので "apparently" に同居させても大きな不都合は生じないのでしょう。
けれど "seemingly" と "reportedly" の意味が同一でない以上、小さな不都合は生じます。 そして、この2つの意味を簡単に判別する確実な方法は存在しません。 「明白に」という意味の選択肢がなくても、"apparently" はやっぱり意味が曖昧な言葉です。
5. 代替表現
ご自分が言葉を発する側に立つときには、"apparently" の使用を避けて、意味が明確な他の表現を使用すると良いでしょう。
"apparently" の代わりに使える表現は次のようなもの:
- obviously ・・・ 明らかに
- It is obvious (that)~ ・・・ ~は明らかだ
- seemingly ・・・ 一見は、表面上は
- It seems (that)~ ・・・ ~と思える、~のようだ
- reportedly ・・・ 伝え聞くところによると
- I hear (that)~ ・・・ ~だと聞く、~だそうだ
- allegedly ・・・ 真偽のほどは分からないが、伝えられるところによると
It is apparent~
また、"It is apparent (that)~" は "apparently" と違って意味が明確で、「~は明白である」の意味にしか理解されません(1)。
叙述形容詞(2) としての"apparent" が「明白な」の意味でしか用いられないためです。(1) 「~は表面的である、うわべだけである」の意味にならない。
(2) 名詞を直接に修飾しない形容詞。 Be動詞の述部などに使われる。 "It is apparent~" の "apparent" は叙述形容詞。役割分担
こうして見ると、現代の英語は "apparently" と "It is apparent" が役割分担する方向に進んだようですね("quite apparently" を除いて)。 次のような役割分担:
- apparently~ ・・・《不確実》一見は~、伝えられるところによると~(seemingly, reportedly)
- It is apparent~ ・・・《確実》~は明白である(obviously)
6. まとめ
- "apparently" は、現代では「明白に」の意味では、ほとんど使われない。
- "apparently" は、現代では主に「確証はないけれど恐らく」の意味で使われる。
- "apparently" の「確証はないけれど恐らく」の意味は、"seemingly" の意味のときと "reportedly" の意味のときがあり、両者の区別は用意ではない。
- したがって "apparently" は意味が曖昧な語である。
- "apparently" は意味が曖昧なので、代わりに他の表現を使うのが良い。