野球、契約書、ビール... 「ドラフト」の意味は? どうして意味が一杯あるの?

質問. 野球とか契約書とかメールとかビールとかの「ドラフト」とは、どういう意味ですか? こんなに一杯の意味があるなんて、どういうことですか?

回答. 野球の「ドラフト」の意味は「新人選手を各球団に割り当てる」です。

契約書やメールなど文書に関して用いられる「ドラフト」の意味は「草稿、下書き」です。

こうした「ドラフト」の色々な意味は、たった1つの意味を起源とします。 以下をご覧ください。

1.「ドラフト」の究極の意味

「ドラフト」の様々な意味の起源となる究極の意味、それは「引くこと」です。

「ドラフト」を英語に戻すと "draft"。 野球の「ドラフト」も契約書などの「ドラフト」もドラフト・ビールの「ドラフト」も、この "draft" です。

その "draft" は元々は "draught" と綴(つづ)りました。 この "draught" の根源的な意味が「引くこと」です。

2. 究極の意味から、どう派生したか?

2.1. 野球の「ドラフト」

野球の「ドラフト」は「(選手を)引っ張って来ること」という意味に理解できます。
野球の「ドラフト」に似る意味として、"draft" には「徴兵(する)」という意味もあります。

2.2. 文書の「ドラフト」

契約書などの文書の「ドラフト(草稿、下書き)」は、「線を引くこと」から転じた「描くこと、書くこと」という意味に由来します。

この意味の "draft" には「(計画などの)草案、叩き台、原案」や「図案、スケッチ」も含まれます。 文章(草稿、下書き)に限らないわけです。
「(絵を)描く、線を引く」を意味する英語に "draw" がありますが、"draft" は "draw" と語源的に近い関係にあります。

2.3. 「ドラフト」ビール

ドラフト・ビールの「ドラフト」は、「(樽から)引き出すこと」に由来します。 缶ビールや瓶ビールに対して、樽から直接コップに注ぐのが「ドラフト・ビール」です。
「ドラフト・ビール」は "draft beer" より "draught beer" と表記することが多いようです。

3. 究極の意味は今どうしているの? 元気にやっているの?

ご安心下さい。 "draught" の当初の意味「引くこと」は "draft" にも受け継がれており、「(漁師が)網を引くこと」や「重いものを引っ張ること」などの意味で使われます(あまり使われていないという話も聞きますが)。

"draught" 自体も "draft" の異表記として(主に英国で)現在でも使われています。

4. "draft" の他の意味

"draft" には次の意味もあります:

  • 小切手
  • 飲むこと
  • 一息に飲み干す量
  • (薬などの)一回分
  • すきま風
  • 船を浮かべるのに必要な水深(喫水)

「引くこと」との関係

小切手」は銀行からカネを「引き出す」のに由来する意味でしょう。

飲む」はコップなどの容器から液体を「(口で吸って)引き出す」イメージだと思います。 "draught" の原初的な意味「引く」から最初に派生した意味が「飲む」でした。

すきま風」は隙間から風を引き出してくるイメージでしょうか?

船を浮かべるのに必要な水深(喫水)」と「引く」の関係はよくわかりません。 しかし、「喫水線」の「」は「喫煙」や「喫茶」に見られるように「飲む、吸う」という意味です。 そして上述のように、"draft" にも「飲むこと」という意味があります。
「喫水」と "draft" は、英語と日本語とで発想が同じだった(それぞれが独立的に発生)のかもしれませんし、「喫水」という日本語が "draft" を訳した言葉("draft" の発想が日本語に輸入されて「喫水」が生まれた)なのかもしれません。

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