"no doubt" の意味を教え... えっ、意味が2つあるの?

1. "no doubt" の直訳

"doubt" が「疑い」を意味する名詞なので、"no doubt" の直訳は「疑いない」です。
"doubt" には「疑う」という動詞としての意味もありますが、"no doubt" の "doubt" は名詞です。

2. 慣用句としての "no doubt"

慣用句の "no doubt" の意味は次の通り:

  1. おそらく、たぶん(probably)、~だと思う(I suppose~)
  2. きっと、疑問の余地なく、疑いなく、確かに(surely, certainly)
1. と 2. の違いは確実性の度合いです。

3. 2つの意味の使い分け

上記の意味 1. と 2. は、どのように使い分けられるのでしょうか?

3.1. 米語か英語か

Collins」では、英国の英語(ブリティッシュ・イングリッシュ)と米国の英語(アメリカン・イングリッシュ)とで "no doubt" 異なる意味を載せています。

3.1.1. ブリ語とアメ語それぞれの意味

ブリ語
  • ほぼ確実に(almost certainly)
アメ語
  • 確かに、確実に(certainly)
  • おそらく(probably)

3.1.2. 所見

ブリ語の「ほぼ確実に」はアメ語の2つの意味「確実に」と「おそらく」のブレンドに思えます。 ブリ語の「ほぼ確実に」の意味がアメ語で2つの意味に分化したのでしょうか?

それとも辞書編纂者の気の迷いで、ブリ語で1つの意味にまとめたものをアメ語では2つの意味に分けたのでしょうか?

「Collins」以外に、"no doubt" の意味に関してブリ語とアメ語を区別する辞書は見当たらないため、ブリ語とアメ語とで "no doubt" の意味や用法が違うのかどうかすら不明瞭です。

仮に違いがあるのなら、次のセクションの分類が適用されるのはアメ語だけです。

3.2. 副詞句か名詞句か

Cambridge Dictionary」のコラム記事によると、"no doubt" は次のように使い分けられる模様です:
  1. "no doubt" が副詞句の場合 → おそらく、たぶん、~だと思う
  2. "no doubt" が名詞句の場合 → きっと、疑問の余地なく、疑いなく、確かに
コラム記事の説明は 2. の意味になる場合として "There is no doubt~" のみを記載します。 ですが恐らく、見分け方のポイントは副詞句名詞句かの違いであり、"I have no doubt~"(*) の "no doubt" も 2. の意味でしょう。
(*) "I have no doubt~" の "no doubt" も名詞句。
このコラム記事の分類に基づいて、以下で "no doubt" の用例を見てみましょう。

3.2.1. "no doubt" が副詞句の例

A: No doubt you’ll want breakfast before you leave tomorrow.

B: Yes, if that’s okay.

A: No problem.

A: 明朝、出発の前に(たぶん)朝食を食べるよね

B: 差し支えなければ。

A: 了解です。

# 「Cambridge Dictionary」のコラム記事に掲載される例文です。

この "No doubt" を副詞 "Probably" に置き換えても文の意味は変わりません。 よって、この "No doubt" は副詞句です。
No doubt she'll call us when she gets there.
彼女はきっと、あっちに到着したら連絡してくれるはず
Oxford Leraner's に掲載の例文。 「ありそうな(確実ではない)事柄について用いる」という説明の下に記載。 Cambridge Dictionary の説明と合致する。

3.2.2. "no doubt" が名詞句の例

I have no doubt that he will succeed.
私は彼が成功することを疑っていない

# 直訳すると「私は彼が成功するという疑念を持たない」。 "no doubt" は "have" の目的語。

"that" は「同格」の "that"。
There is no doubt he is a criminal.
彼が疑いの余地なく犯罪者だ。
# "criminal" は「犯罪者」という意味。 "doubt" の後ろに関係代名詞の "that" が省略されている。

3.2.3. コラム記事と矛盾する例

Cambridge Dictionary」のコラム記事の分類で全てがすっきり説明されるわけではありません。
No doubt you can provide a better definition (that is, there's no doubt that you can.)
君がもっと良い定義を提供できるのは確実だ(つまり、君がそうできることに疑問の余地は無い

# みんなで作る辞書「Wiktionary」に掲載の例文。

この例文の記載場所は、"no doubt" の意味を「疑いの余地なく(without doubt)、確かに(surely)」と説明する下。 しかも、ご丁寧にカッコ内で "there's no doubt" に言い換えているから、この例文を追加したユーザーが、この副詞句 "no doubt" を「きっと、疑問の余地なく、疑いなく、確かに」の意味に捉えているのは疑問の余地がない。

この文は皮肉を言っているように見受けられる。 つまり、「私の提供した定義を小馬鹿にするからには、君はもちろんもっと良い定義を提供できるんだろうな?」の意味で「君ならもっと良い定義を提供できること間違いなし(no doubt)だ」と言っているっぽい。

この文が皮肉だとすればやはり、この "No doubt" は「確実」の意味。
She was a top student, no doubt about it (=it is certainly true).
彼女は最優秀な学生だった。 そのことに疑問の余地はない(それは確かに真実だ)。

Longman に掲載の例文。

"no doubt" だけで独立しておらず "about it" と意味的につながってるから、この "no doubt" は副詞句ではなく名詞句とみなすべき。 "I have/there is no doubt about it" が省略されて "no doubt about it" になっていると考えられる。

そして、その名詞句の "no doubt" が「確実」の意味で使われている。
No doubt many will regard these as harsh words, but regrettably they are true.
これら(たぶん私が言ったこと)を厳しい言い方だと見なす者は確かに多いだろう、だが残念ながらこれら(たぶん私が言ったこと)は真実だ。

Collins に掲載。 この例文の記載場所は、"no doubt" が「いったん譲歩」する言い回し「確かに~だ、しかし...だ(No doubt~, but...)」に用いられるという説明の下。

だから、この "no doubt" は「きっと、確かに、疑問の余地なく」の意味。 そうでなくては言い回しが成立しない。